隣の駐車場との境に植えてあるキンシバイに、カイガラムシが付いているのを見つけた。枝に真っ白な分泌物(虫体被覆物というらしい)がびっしりついている。いつの間にこんなに?農薬を使いたくないので使い古しの歯ブラシでこそげ落とし始めたが、根元から先まで数が多く、すべてて取りきるのは容易ではない。
そんな折、フランスのラジオ局「france culture」の番組ニュースレターをスマホで見ていると、きれいなイラストと番組タイトルにあった単語「cochenille」に眼がとまった。単語を長押しして検索する。と、そこに現れたのは、葉裏にうごめく無数の白い小さな虫の画像。無意識に美しいものを想像していたのだろう。意表を突く害虫の出現に度肝を抜かれた。
cochenilleはカイガラムシのことだった。害虫と書いたが、これは半分間違い。番組のテーマとなっていたのは、深紅色を生み出す色素の原料となるメキシコカイガラムシ。ウチワサボテンに寄生する昆虫で16世紀、コンキスタドールがメキシコの市場で売られているのを見つけ、色の鮮やかさと安定性に一驚した。この色素は貴族社会で珍重され、ヨーロッパの羊毛、絹の高級手工業に使われた。権力者やカトリックの高位聖職者の力を象徴するものにもなった。このカイガラムシを独占するため、スペイン人はメキシコ高地で生産に力を入れ、18世紀の終わりにはフランスの冒険家がこのカイガラムシを捕まえるため、医者に変装して入り込んだという。
以上の知識は、番組の内容紹介にあったものの要約。放送も聴いてみたが、早口(もちろんフランス人に普通の速度)で、内容の半分も聞き取れなかった。この番組はゲストの研究者が今年2月、「赤いカイガラムシ 16-21世紀の世界を彩った昆虫の歴史」という本を出したことから企画されたようだ。
キンシバイはきのう虫がついた枝(ほとんど)を強剪定した。庭のユキヤナギとブルーベリーにも白いものを見つけた。ため息が出るが、おかげで随分と勉強になった。