自宅の南側テラスに置いたブーゲンビリア。差し込む光が庇でくっきりと明暗を分け、板壁が額縁のように花の周りを縁取る。階段をのぼった先で、この小さな風景を眼にしたとき、わたしは、ルドンのリトグラフ「昼」(1891年、『夢想』より)を思い出した。
上の写真は福永武彦の「藝術の慰め」(1965年初版)に載っていたもの。福永が22人の画家たちの作品を取り上げ、筆の運ぶままに芸術の庭に遊ぶ1冊だ。その世界に無知だった高校生のわたしには、格好の美術案内だった。
ルドンでは昨年3月に悔しい思いをした。国内随一のコレクションを誇るという岐阜県美術館に出かけたのだが、見ることができたのは「ダブルプロフィル」と題された小さな木炭画1点だけだった。問い合わせもせずに出かけたこちらが迂闊なのだが、特急「しらさぎ」を乗り継ぎ往復8時間、交通費1万円をかけての結果に、力が抜けた。あとで知ったのだが、その後、5月から8月にかけて、なんと「ルドンと日本」と題する展覧会が同館で開かれたのだった。


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