2022年5月29日日曜日

香る季節

道端に咲くノイバラ


 きのう自転車で山道を下っていると、風のなかにノイバラの香りがした。白い小さな釣鐘状の花をつけた木があったので、行き過ぎてから戻ってじっくり眺めた。エゴノキだった。この花も香りを放つが、急斜面に生えていて近寄れず、香りはかげなかった。

 エゴノキを知ったのは学生時代、友達を誘って武蔵丘陵森林公園を歩いたとき。プレートにその名前を見つけた友人のKが「面白い名前だな」と笑った。名前の由来は、苦味の強い果皮を食べるとエグみを感じるところからついたようだが、友人が連想したのはエゴイストの「エゴ」。つまり自意識。以前、ブログに書いたが、ジョン・グレイは「猫に学ぶ」で、人間という動物の特別なみじめさの原因として、「再帰的自意識」を挙げていた。

 Kは当時、クラシックギターを熱心に習っていた。大学卒業後、百貨店に就職したが、ギターを諦められず会社を辞めてプロを目指した。しかし、コンクールに挑戦しても落選が続き、失意のため自死した。不惑を過ぎていた。エゴノキは、その友人の思い出と切り離せない。

トベラの花

 今朝、犬の散歩のとき、道沿いのトベラとシャリンバイが花盛りだった。トベラをかぐと、いい香りがした。バラ科のシャリンバイも芳しい。ともに海岸近くに生えるので、当地に住んでからよく目にするようになった。

 朝食後、庭で草取りや水やりをした。しゃがんで作業をしているとバラが香ってきた。12年前に住んでから、毎年バラの苗を植えてきた。20種くらいになった。庭に点在するバラと、これもすっかり大きくなった3本のオリーブ。風にそよぐオリーブの葉叢を眺め、バラの香りに鼻孔をくすぐられて、なんとも言えない安らぎを覚えた。室内では、鉢植えのアラビアジャスミンがまだ花をつけている。

つるバラ「フィリスバイド」。これは香らない


2022年5月16日月曜日

ガビチョウ

 

板鼻堰の水辺

 歌うように大きな音色の鳥のさえずりが聞こえ、思わず足を止めた。これまで耳にしたことのない美声。スマホのアプリで録音して解析すると、ガビチョウと表示された。

 調べると、中国南部から東南アジア北部にかけて生息し、ペットで買われていたものがかご抜け、または故意に放されて留鳥となり、いまは南東北、関東、中部、九州北部で見られるという。特定外来生物に指定されている。

 鳴き声を聞いたのは、群馬県安中市板鼻の旧道を歩いていたとき。ここは中仙道の宿場町だったところで、私のふるさと。いま往時の歴史を偲ばせるものはほとんどない。1月に父が亡くなり、その旧道に面した実家を継ぐことになった。そのため、毎月、実家の整理に通っている。時代の波に洗われ、街道沿いの商店も少なくなった。古い家が取り壊され、新しく建てられた家も目につく。そんななかで、旧街道の北側を流れる板鼻堰の風景は昔とそう変わらず、ホッとする。子どものときは日常の風景として意識することはなかったが、故郷を長く離れた者の目には、懐かしさもあるが、絵になる風景として少し自慢したくもなる。

 ガビチョウは北陸にはいないから、思わぬ出会いだった。

2022年5月4日水曜日

アキグミとコチドリ

アキグミ

 きのう朝の散歩で、アキグミが鈴なりの花をつけているのを見つけた。顔を寄せると、香りがする。以前、花が満開のアキグミが何本も生えている坂道を通ったら、折からの風に乗って強い香りが吹き寄せた。

 聞き慣れない鳥の声を識別アプリで録音すると、コチドリと出た。帰宅してコチドリのさえずりをユーチューブで再生すると、アプリの解析通りコチドリだった。海に近い丘陵地帯なので、美声のイソヒヨドリも今の時期、電柱や屋根にとまり、いいのどを披露してくれる。

新しい庭

 15年住んだ石川県かほく市から、群馬県安中市の生家跡に建てた新居に引っ越してまもなく3週間になる。古希を目前に、まさに終の棲家。  築百年以上経つ蔵を改装して、ギャラリーと休憩  ・談話スペースにする予定。蔵と母屋の間は井戸水を循環させた池を設け、鳥や昆...