作家の「生まれ育った上州の山村の冠婚葬祭には必ずじゃがいもの天ぷらと地粉のうどんが出た。(中略)育ての親の祖母が作ってくれる夕食は煮込みうどんだけのことが多かった。そこにじゃがいもの天ぷらが加わればごちそうだった」
作家は地粉のうどんと書いているが、私の実家では冬になると、母がよくおきりこみを作った。こね鉢でこね、手動の製麺機で伸ばし、ギアを換えて機械にかければうどん状になる。うどんと違うのは、白菜などを煮込んだ味噌仕立ての鍋の中に、打ち粉のついたまま麺を投じることだ。めんを茹で上げていないから、ぐつぐつと煮こむととろみが出る。ふうふうしながら食べると、からだの芯からあたたまる。
ただ、作家の記述でおやっと思ったところがある。「やはりゆでたじゃがいもに衣をつけて揚げるのは特殊な食べ物なのか」。ゆでてから揚げるというのは初耳だった。作家の生まれた吾妻地方では、それが一般的だったのだろうか。情報をお持ちのかたがあれば、ぜひお聞きしたい。
写真には、昨年師走に読んだ谷口ジローの「犬を飼うそして…猫を飼う」も入れてみた。涙腺が刺激された1冊。谷口の作品では「『ぼっちゃん』の時代」を随分前に読んだ。数年前からフランスのメディアに接するようになって、驚いたことの中に、フランスでの谷口の評価の高さ。日本よりよく読まれているのではないだろうか。宮崎駿については、仏ラジオの哲学番組でシリーズで取り上げられるなど折につけ紹介されている。知人のフランス人に「どんな存在か」と問うたら、「Dieu!」(神だ)と返された。