2021年9月26日日曜日

天然酵母とは?


 パン作りを始めて6年ほどになる。5月から天然酵母でつくるようになってから、身近なその食べ物の奥深さを感じるようになった。始めたころはレーズン種で何度か作ったこともあるが、毎朝食用に平均週1回は焼くとなると、結局、確実に膨らみ、失敗の少ないイーストを使うことに落ち着いた。

  世はパンブームだ。「天然酵母パン」という言葉もよく見かける。しかし、志賀勝栄さんの名著「パンの世界」(講談社選書メチエ)によれば、「いまの日本に、発酵種で作られたパンはほとんどありません。(中略)個人店で『天然酵母』を謳っているところはありますが、ほとんどはイーストと併用です」。この本が出てから7年たつ。状況はあまり変わっていないのだろう。              

 では、イーストは人工的なのか。同書から引用する。「イーストというのはサッカロマイセス属セルビシエ種の酵母菌を純粋培養しているだけであって、人工的に作り出したものではありません。イーストも自然由来の生き物」ということになる。イーストの身になれば、「天然」に対比されるのはちょっと心外だろう。

 では、天然酵母とはなんだろう。イーストのように純粋培養したものではなく、サッカロマイセスセルビシエ以外にも、さまざまな酵母や菌が入ったものだ。どうやったら作れるのだろう。小麦粉だけで発酵種をつくりたかったが、参考になるような本は見当たらない。フランスAmazonで探すと、口コミ評価の高い本が見つかった。


  

 「FAIRE SON LEVAIN」(自分のルヴァンをつくる)。ルヴァンは「酵母種」の意味だ。本の最初のほうに、祖先の食物と題して、こんなことが書かれている。

 「イーストが作られ商品化される前、私たちの祖先は何世紀ものあいだ天然酵母で滋養のあるパンを作ってきた。天然酵母を作り上げることは、パン作りの原点に戻ること以外のなにものでもない」。そして、著者は想像する。「最初の酵母種パンの始まりは、たぶんエジプト人が、精白していない穀物を片隅に放置しておくと、偶然にもその時の空気、気温、野生酵母が幸いして発酵し、膨らんだのだろう」。

 この本を参考書に小麦酵母種づくりを始めた。その試行錯誤についてはおいおい書いていきたい。


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