2022年2月7日月曜日

ガエル・ファイユの音楽


 朝、紙が椅子から落ちたので拾い上げると、ガエル・ファイユ(Gaël Faye)の「Chalouper」の歌詞をプリントアウトしたものだった。
 そこでSpotifyのお気に入りに入っているこの曲を流し、仏語の勉強を兼ねて訳してみた。
 ガエル・ファイユはブルンジで生まれ、ルワンダとフランスの国籍を持つ作家、作曲家、ラッパーで、今年8月で不惑を迎えるようだ。自伝的な作品「PETIT PAYS」で作家デビューし、高校生が選ぶゴンクール賞、FNAC小説賞を受賞。ゴンクール賞でも最終候補作となり、フランスで40万部以上の売り上げを記録したという。日本でも翻訳がハヤカワ文庫から出ている。
 Chalouperは、肩を揺すって踊る、歩くという意味。フランスのラジオ番組で初めてこの曲を耳にしたとき、物悲しいメロディーに“ひと聞き惚れ”した。歌詞を辞書を引き引き読んでみると、いまの自分にピッタリ来る。多分、30歳前後で作った曲なのだろうが、老いた自分が若い時に踊った曲に寄せて恋人を思い出すという、ある意味シニアの歌なのだ。
 誤訳を承知で紹介してみる。

 いつか腰は曲がり
 顔には過ぎた人生、すべての成功と挫折を語る
 “卒業証書”の跡
 手は風に揺れ
 軽いステップで時を刻み続けるビギンのようだ
 晴れ着を着込んだような日差しの下
 長生きしたある日には
 バルコニーにベゴニアの花
 カリブのメロディー
 居間にはセピア色した写真
 人生の時は過ぎても
 燃え尽きた青春が終わっても
 だれも使い古したからだで
 肩を揺すって踊ることはやめられない
 (リフレイン)
 シャルペ、シャルペ

 春が秋になる前に
 みんなが岸辺を去る前に
 カリブの曲のリフレインを
 レコードプレーヤーでスクラッチしよう
 小さな歩幅でステップを切って
 ダンスフロアで疲れ果てる
 日除けが上がっているあいだは
 心臓の動悸はメトロノームのように規則的
 リフレインが狂ったような年月を思い出させる
 笑ってただ死ぬだろういつか
 ああ、あの突堤を思い出しておくれ
 ぼくたちの思い出の波の音を
 いつかこのリフレインが戻ってくる
 私の声が消え去るときに
 リフレインを思い出しておくれ
 肩を揺すって踊り続けておくれ
(リフレイン)
 シャルペ、シャルペ

 ぼくのステップで回っておくれ
 ぼくときみに、年月は滑るようにやってくる
 愛が終わるまで踊り続けよう
 シャルペ、シャルペ、シャルペ

 ビギンはウィキペディアによれば、マルチニック諸島がルーツのダンス音楽で、奴隷制度時代におそらく遡り、ジャズの先祖のひとつともされる。

 曲を聴いていると、青春の日々がよみがえる。戻れない日々は常に切ない。

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