板鼻堰の水辺 |
歌うように大きな音色の鳥のさえずりが聞こえ、思わず足を止めた。これまで耳にしたことのない美声。スマホのアプリで録音して解析すると、ガビチョウと表示された。
調べると、中国南部から東南アジア北部にかけて生息し、ペットで買われていたものがかご抜け、または故意に放されて留鳥となり、いまは南東北、関東、中部、九州北部で見られるという。特定外来生物に指定されている。
鳴き声を聞いたのは、群馬県安中市板鼻の旧道を歩いていたとき。ここは中仙道の宿場町だったところで、私のふるさと。いま往時の歴史を偲ばせるものはほとんどない。1月に父が亡くなり、その旧道に面した実家を継ぐことになった。そのため、毎月、実家の整理に通っている。時代の波に洗われ、街道沿いの商店も少なくなった。古い家が取り壊され、新しく建てられた家も目につく。そんななかで、旧街道の北側を流れる板鼻堰の風景は昔とそう変わらず、ホッとする。子どものときは日常の風景として意識することはなかったが、故郷を長く離れた者の目には、懐かしさもあるが、絵になる風景として少し自慢したくもなる。
ガビチョウは北陸にはいないから、思わぬ出会いだった。
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