白山市瀬波のオンソリ山(888.6m)を68歳の誕生日を記念して先日登ってきた。昨年1月に心臓の手術をしてからピークを目指す山歩きは初めて。心臓や足がどう反応するのか知りたかったこともある。
オンソリ山(大恐山)は、書店で分県登山ガイド「石川県の山」を立ち読みしたとき、初めて山名を目にした。持っている古い版には記載のない山だった。登山口近くに広大なカタクリの群生地があるというのにも惹かれた。
出かけた4月下旬、カタクリは終わっているようだったが、山頂近くではトクワカソウが見られるという。以前登ったことのある蟹ノ目山はこの花の群生が見事で、再訪したことがある。
やはりカタクリはわずかしか咲いていなかった。1万坪という群生地はたしかに広い。しかし、ネットで「日本一広い」という記述を目にすると、全山をカタクリが覆う秋田の山を思い浮かべ、首を横に振るしかない。いまは仙北市になった旧西木村の群生地が有名だが、カタクリの広大な群生はそこに限らない。岩手県にもあちこちにあるようだ。どうも日本人は、ほかと比べることなく「日本一」と自慢したがる。「ここは日本一住みやすい」「ここの魚は日本一うまい」など様々に。そう言う人は決まって、他の土地に住んだこともなく、旅の経験も少ない。「ニッポンチャチャチャ」につながる心性である。
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| トクワカソウ |
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| 途中で見えた白山。山頂は眺望なし。 |
ゆっくり歩いて山頂まで2時間。思っていた以上に急登が続いたが、ブナの新緑、残雪の白山、タムシバの白い花、トクワカソウに励まされた。怖いのは帰りだった。案の定、途中で足を取られて転んだ。左のヒザ下を擦りむいたが、その程度で済んだ。
まだ里山程度なら歩けることがわかった。しかし、脚力は明らかに落ちた。急な下りを軽やかに追い抜いていくシニア男性の後ろ姿にため息が出た。あれに近い足運びができた日は遠い昔だ。もう山頂を目指すことはやめよう。頂きに立たなくとも、木々や花々を愛でることはできる。
敬愛する辻まことは、ひたすらピークを目指すだけの、日本人の山歩きを馬鹿にしていた。日本では山歩きが文化にならないのは、山頂を極めてよしとする、そんなスタイルにあるのではないだろうか。負け惜しみに聞こえるが、山は一人で楽しむに限るとしみじみ思う。カタクリの花は見られなかったが、時期には登山者が数珠つなぎとなる山でなくてよかった。
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| 盛りを過ぎたタムシバは香らなかった。 |




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