11日ぶりに外を歩くことができた。雪の日や荒天が続き、出かけられなかった。この間、父が亡くなり、葬儀のため群馬を往復するという思わぬことが起きた。前回散歩した14日は、強風で波の花が岸辺に吹き寄せられていた。その波の花を見た夜に340キロ離れた病院で、父は95歳で不帰の人になった。
葬儀から帰宅して、ジャン・グルニエの「Sur la mort d'un chien(犬の死について)」を読み終えた。亡き愛犬の思い出や犬をめぐる思索を綴った90編の断章から成る、わずか76ページの薄っぺらでそっけない作りの、小冊子のような本だが、犬を飼ったことがある人が読めば、きっと何度も深くうなづくだろう。
拙い訳で少し紹介すると。
「わたしは犬がそうするように、愛をもって振る舞えさえすればよいというシンプルな決まりを持ちたいものだ」
「毎朝、犬たちはあなたを見つけに来る。そして、あなたへの愛を表す。彼らの一日はこうした愛と信頼の行動から始まる。犬たちは少なくとも意気込んでいるのだ」
「私は、放浪と狩りという犬の本能を妨げたことに自責の念を感じる。私たちといたために、犬は仕事を失い、無為を強いられたのだ」
「飼い主になつき、家を気に入った犬たちは、はたして自由である言えるのだろうか」
「私が病気のとき、愛犬は私のように苦しんでいた」
「私はしばしばつぶやく。『犬をもう飼わなかったら、人生は快適になることだろう』。そしてそう言いながら、もう飼わないとなれば後悔するだろうことが分かっているのだ」
「愛情があふれるとき、不安を訴えるとき、犬たちは眼にいっぱい涙をためていた」
グルニエの犬の眼の描写から、道浦母都子の短歌を思い出した。
「わたくしの心乱れてありしとき海のようなる犬の目に会う」
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