別府の鉄輪温泉を初めて訪ねた。金沢、新大阪、小倉で乗り換え、列車で8時間余り。湯治が目的だが、5泊6日はちょっと短かった。宿は「ひろみやToji Stay Hiromiya」。湯治をうたう宿だが、アルファベットで表記しているように、コロナ前は外国人旅行者がとても多かったようだ。ちなみに予約はBooking.com。素泊まり専門で、妻と2人で5泊で23,524円。1泊1人2,350円の計算になる。宿に内湯はあるが、徒歩数分のところに100円か150円で朝6時から入れる銭湯がいくつもある。自炊できるキッチンもあり、調理器具、食器も完備し、近くにスーパーもある。界隈を散歩して気づいたが、「貸間」「かしま」の看板が目につく。湯治客が多かった往時がうかがわれる。市街地にある温泉なので、普通の暮らしの中に温泉文化が息づいている。
さて、着いた翌朝、朝湯と散歩兼ねて歩いていると、思わぬものを目が捉え、言葉を失った。緩い上りの小道の傍らに、鮮やかな赤紫の塊。遠目にも木に群がり咲く花だとわかったが、鈍色の北陸の空の下からやってきた旅人には、にわかに信じ難い光景である。近づくと、地植えされ、樹齢を重ねた立派なブーゲンビリアだった。
11月26日のことだった。北陸でこの時期に見られる花はサザンカくらい。わが家にも鉢植えのブーゲンビリアがあるが、12月に入れば、室内に避寒させる。
それから数日後、午前中、鉱泥温泉の泥湯に浸かったあと、近くの海地獄に向かってブラブラ歩いていくと、こんな鮮やかな花を目にした。南米原産のマメ科の花木、コバノセンナと後でわかった。
「ひろみや」を宿に選んだのは、親切な応対に感激したフランス人の女性が書いた口コミを読んだから。宿を切り盛りするミホさんは気さくで温かく迎えてくれた。宿泊した外国人のなかにメールを交換する人が何人かいるそうだ。「でも、わたし英語はまったくできないんです」。その気になればなんでもできる。
旅の楽しみは、安くて新鮮な材料を自分で見つけて、自分で調理する食事に似ている。お金をたくさん使っても、食事と旅は満足するとは限らない。
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